イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
彼は立てた親指で中を示す。怪訝に思いながら、少しだけ開いていた障子の隙間から覗き見ると、後輩達に囲まれる一葉の後ろ姿がある。

どうやら質問攻めにあい、タジタジになっているようだ。そして、俺のどこが好きなのかと聞かれた時、自然と彼女の答えに耳を澄ませてしまっていた。


「私の料理を、美味しいって喜んで食べてくれるところと、実は優しい心を持ってるところ。あとは……私の内面をちゃんと見ていてくれるところ、かな」


一葉の表情は見えないが、その声はとても穏やかで、少し胸が疼いた。

……俺達の関係も、一葉が俺を好きだというのも嘘。だから、適当に答えたのかもしれない。

だが、今のが本心であってほしいと、願っている自分がいる。


「今の、俺には嘘ついてるようには聞こえなかったけどな」


俺の心を見透かしたように、佐原さんに言われてドキリとした。

ふっと笑った彼は「愛されてんじゃん」と言い、俺の肩をぽんと叩く。そして部下達の中へ乗り込んでいき、俺もその場から離れた。


もしも、佐原さんの言う通りなら……そう考えると、また溢れてくる。あの感覚が。

これはきっと、彼女を愛おしく想っている証拠──。

それに気が付けば、どうして結婚に対するマイナスイメージを払拭させたくなったのか、その答えも自然と引き出される。

大切な、なくしたくない存在を見付けたからだ、と。

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