イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
しかし、ぬくもりに包まれたのはつかの間で、すぐに温度が下がってしまった。

早乙女と一葉が親密そうにしているところを見ただけで、こんなに心が冷たくなるなんて。


……これも同じだ、桐絵の愛情が兄貴に移っていることを知った、あの時と。

いや、イライラの比重はそれ以上かもしれない。あの頃は兄貴が絡んでいたが、今はまったく関係ないのだから。

ただただ、あいつが他の男といるのが気に食わない。


幼稚な嫉妬で早乙女から一葉を奪い、ふたりで帰ることにしたが、タクシーの中で少し気を落ち着けると、また別の考えが生まれた。

一葉の気持ちはどうなのだろうか。あれだけ楽しそうに喋っていたのだから、早乙女に気があるのかもしれない。前から度々彼の話も出していたし。

昔は、兄貴に対抗する気持ちから桐絵を縛ってしまっていた。だが今は、偽の夫婦という関係が一葉を縛っている。


俺は、いつの間にか一葉を自分だけのものにしておきたくて、このままごとのような関係を続けていたのだ。

もしも彼女が早乙女のことを好きなら、早く解放してあげなければいけない。昔のように……。

また同じことを繰り返すのかと思うと、胸が切り裂かれそうなほど痛んだ。

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