イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
波月駅に着いたのは、午後九時半を回った頃。人もまばらな改札を抜け、構内にあるカフェに来ると、ひとりで座っている桐絵がガラス越しに見えた。
ひとまずホッとしたと同時に、カフェにいるなんてずいぶん優雅じゃねーかと眉をひそめる。
表情は浮かないが、俺が心配していたような危機ではなさそうで、若干気が抜ける。
カフェの中へ入り、桐絵に近付いた俺は、向かい側の席の椅子を引きながら口を開いた。
「どうした、桐絵? くだらねぇ用件だったらタダじゃおかねーぞ」
「わぁ、零士くん! こんな時間に呼び出して、本当にごめんなさい!!」
眉根を寄せる俺を見た瞬間、彼女はガタッと立ち上がり、長い髪を揺らして頭を下げた。
店内にいた数人の客からチラチラと向けられる視線を感じつつ、お互い腰を下ろすと、すぐに本題を切り出す。
「で、何があった?」
「……ん、あのね……今日友達と会ってたんだけど、さっき電車で帰ってくる途中に気分が悪くなって。それで気付いたの……生理、来てないってことに」
肩をすくめる桐絵から、歯切れ悪くこぼれる言葉で、はっとさせられた。
「それって、まさか……」
「すぐに検査薬買って調べたら……陽性だった」
目を開く俺を見上げ、彼女は「妊娠、してるみたい」と、強張った表情で告げた。