イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
それはまったく予想外だ。もちろん驚きはあるが、悪い報告ではなかったことにほっと胸を撫で下ろし、息を吐き出す。


「おめでとう。よかったじゃん」


喜ばしいことだが、あまりに突然で現実味がなく、淡々と祝福した。

しかし、桐絵は放心状態のようにぼうっとして、手元のフルーツジュースを見つめている。


「……何で黙んの」


まさか、まだ子供はいらないと思っているのか?と、また胸騒ぎを覚えつつ、ボソッとこぼした。

さっきの電話も、喜んで興奮している感じじゃなかったしな……と思い出しながら、眉をひそめていると、桐絵はたどたどしく話し出す。


「……計画的じゃなかったから、めちゃくちゃ動揺しちゃって。私が計算間違えてたみたいで、安全日だと思ってたから、その……」

「つけずにヤッたんだな」


まどろっこしい言い分を端的にまとめてやると、ぼっと火がついたように彼女の顔が真っ赤になる。そして、「あぅ~~」と謎の唸り声を上げながら顔を両手で覆った。

なに今さら恥ずかしがってんだ。子供ができる可能性があることを知りながら避妊しなかったんだから、もう夫婦仲も問題ないんじゃないのか?


「仲いいんじゃん」


縮こまる桐絵を据わった目で見て言うと、彼女は赤い顔のまま目を泳がせる。

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