イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?

ご飯を食べつつ、ゆっくり聞かせてもらった話は、なんだかリアルで切なかった。

部長と付き合っていた時のこと、その間に彼のお兄さんに惹かれてしまったこと、結婚後に不満が出てうまくいかなかったこと……。

すべて聞くと、部長が結婚願望を持てなくなったのもわかるような気がするし、やるせなかっただろうなと思う。

一度は愛した人をお兄さんに譲ったんだもの。そのふたりが幸せにならなければ、部長が報われない。


サラダの器にフォークを置いた桐絵さんは、目を伏せたまま言う。


「……私、ずっと零士くんに甘えてた。彼といると本当に気楽だったから、遠慮がなさすぎたの。無神経なことを言って傷付けたこともあったし、昔も、つい先週も頼っちゃったし」


先週というと、きっと忘年会の後のことだろう。あの時はどういう事情だったのか、すごく気になる。


「先週は何があったんですか?」


私もトマトクリームパスタをフォークに絡める手を止めて聞くと、桐絵さんはそっとお腹に手をあて、ふわりと微笑む。


「妊娠してることがわかったの」

「えっ……そうなんですか!? おめでとうございます!」


まさか妊娠しているとは! なんとなく良くない事情なのかと思っていたから、真逆でびっくりだ。

『あんまり食欲がないから』と言ってサラダしか頼んでいなかったけど、つわりのせいだったのか。

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