イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
* * *
翌日、朝から妙な緊張で落ち着かない私は、朝食もまともに喉を通らず、早めに準備を終えて部長が来るのを待っていた。
服装はとりあえず品の良い切り替えワンピースを選んでみた。その姿と、ゆるふわの下ろした髪を鏡の前でチェックしていると、約束の十一時の五分前にスマホが鳴り出す。彼が来た合図だ。
「はー……行くしかない!」
これからどうなるんだろう、と不安と緊張を増しながら、ベージュのコートを羽織ってバッグを掴んだ。
部屋を出てアパートの階段を下りると、路肩に停めた黒い愛車に寄り掛かるようにして、部長が待っているのが見えた。
ダークグレーのスーツを着こなした姿は、いつもと同じはずなのにやけに胸が高鳴る。二日間出張で会わなかったせいかな……心臓動きすぎ。
姿を見ただけで、こんなに嬉しくてドキドキするほど好きになっちゃってどうする私……。
歩調も速くして駆け寄ると、ぎこちなく会釈する。
「お、お疲れ様、です」
「おぅ。行くぞ」
助手席のドアを開け、私が乗るまで待ってから運転席へ移動する部長の身のこなしは、執事を彷彿とさせるくらい優雅。なぜか仕事の時のように挨拶してしまい、カチコチになっている私とは大違いだ。