イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
偽装夫婦が終わるとき
食事の後は、零士さんが買ってきたお茶菓子をお供にティータイムに突入した。皆のマシンガントークに付き合わされたおかげで長居してしまい、実家を後にしたのは三時半頃。
零士さんは『一葉をよろしく!』とお父さん達に念を押されていたけど、私は逃げるように車に乗り込んだのだった。
「……零士さん、どういうつもりですか」
車が帰り道を走り始めてすぐ、私は不機嫌な声を漏らす。なんだかもう今日一日で心が疲弊しきっている。
そんな私に気付いているはずなのに、零士さんは満足げな笑みを浮かべてこんなことを言う。
「上手くいってよかったよ。明るくていい家族だな」
「何呑気なこと言ってるんですかっ!」
くわっと険しい顔で運転席を振り向く私。余計疲れるだけだから怒りたくないのに。
「皆もう完璧信じてますよ!? あんなことしたら、零士さんだって困る──」
その瞬間、またしてもぶにょっと頬を掴まれた。右手では運転しながら……なんて器用な。
ブサイクだろう私に、彼は無表情でぴしゃりと言い放つ。
「今はまだ質問は受け付けない。着いたら起こしてやるから、黙って寝てろ」
きぃぃ、悔しいっ! まだ教えてくれないわけ!?
どうにかこうにか憤りを抑え、「寝ません!」と吐き捨ててぷいっとそっぽを向いた。