イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?

「シミュレーションゲームみたいですね……実体験バージョンの」

「そう思って、気楽に楽しめ」


顎に手をあてて呟く私の肩を、ぽんっと叩く部長。上目遣いで見上げると、いたずらっぽく笑う彼が映る。

まさか、ブラック上司という異名を持つこの人が、私なんかにこんなままごと遊びみたいなことを提案してくるなんて。アンビリーバボーですよ。

でも、本当にこんなことをしてしまっていいんだろうか。皆を騙しているわけだし……。

そんな私の不安を見抜いたように、部長はこんなことを言ってくる。


「バレたらバレたで、俺が責任取るから心配すんな。ま、俺は何が起きても切り抜ける自信あるけど」


片手をポケットに突っ込み、ふっと鼻で笑う姿は余裕綽々だ。

再び会議室のドアに向かって足を踏み出す彼に、私は単純な疑問を投げかける。


「何で、そこまでするんですか？」


ただ本庄さんのような女性を追い払うために、偽装夫婦を演じるなんて、どうしても違和感みたいなものがある。

怪訝な表情で広い背中を見つめていると、部長は足を止めてこちらを振り返る。さらりと黒髪を揺らし、涼しげな瞳で私を捉えて、こんな一言を放った。


「お前の低すぎる恋愛偏差値も上げてやろうかと思って」