イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
あまり詳細を見られないよう、呆然とする丸山さんからぱっと証明書を離した彼は、片手をポケットに突っ込み、ゆっくり足を進めながら言う。


「心配しなくても、このコピーは佐原部長の手元にある。それより、個人情報が載ってる書類を盗み見て堂々と暴露するような非常識な奴は、どこのどいつだろうな?」


静かな怒りを滲ませる声と、鋭い眼差しが丸山さんに向けられると、彼女は青ざめた顔でギクリとしていた。あぁ、丸山さんが盗み見たわけじゃないのに……。

嘘をついていた自分のことは棚に上げて、有無を言わせなくするブラック部長様は、どんどん私の方へ近付いてくる。

な、何かまたやらかしてくれそうな予感。


「お前らも、人の噂してる暇があったら……」


“契約の一本くらい取ってこい”と、以前と同じことを言うのかと思いきや。


「このくらい、イイ嫁を掴まえろ」


私の肩をぐいっと抱き寄せ、魅力的な笑みを浮かべてそう言い放った。

ほら、ニヤけてる中谷さん以外ぽかんとしちゃってますよ! いくらもう私達の関係がニセモノじゃないとしても、こんなにアピールしなくても……。



──実は私達、本当の本当に結婚したのです。

想いが通じ合った、その翌日に。

支店長がああやって言ってきたのは、昨日報告していたから。証明書も、もちろん本物だ。

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