イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
俺より少し年上である、見るからに人の良さそうな彼は、俺の左手薬指を指して言う。


「もしかして、それのせいかな」


ニコニコしている彼に、俺もふっと笑みをこぼして、「そうかもしれませんね」と返した。自分ではそんな変化はまったくわからないが。

マネージャーは、先ほど俺が渡した資料を手に取り、笑顔を絶やさないままそれを眺める。


「これにも驚きましたよ。“チーズやハムをハート型にくり抜く”とか、“クッキーの型を使って、チョコのような一口サイズのハンバーグや寿司を作る”とか。部長さんはそんなこと考えるようなタイプじゃないと思ってたから」


彼が見る用紙には、バレンタインの料理に使える一工夫のアドバイスが書かれている。これは一葉が書いたものだ。

たまにはこういう手作り感のある資料も真心が伝わるかと思い、そのまま使ってみることにしたのだが、ここ以外の施設でも好感触だった。

俺もそれを眺め、口元を緩ませる。


「これ、実は妻のアイデアなんです。おっしゃる通り、私にはそんな発想はできませんでしたよ。今日は、彼女が考えてくれたことを、私が精一杯提案させていただきました」


一葉の努力を無駄にしないよう、最善の提案をするのも俺の役目だ。そうやって、仕事の面でも協力し合えることが嬉しかったりもする。

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