イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
ひとり残された私は、マヌケだろう顔のまま一時停止する。

なんか、すでに旦那様になりきっておられますよ……。絶対私のことからかって楽しんでいるよね?


「なんて人だ……」


その場に立ち尽くしたまま呟く私。

彼がブラック上司と言われるのが、身を持ってわかった気がする。仕事に厳しいだけじゃなく、お腹の中も黒いのでは?

逆らったらどうなることやら……。いつまで続けるのかもわからないけど、今は彼と“夫婦ごっこ”をするしかなくなってしまったらしい。


でも、彼がこんなことをし始めた原因を辿れば、自分の軽はずみな発言が大本だ。もう取り消すことは不可能なのだと思うと、後悔のため息しか出ない。

まさかあの時、酔っ払った勢いで口にしてしまったことを、今になって持ち出されるとは……。まさに、口は災いのもと。


「何であんなこと言っちゃったんだろ、私……」


情けない声が、静かな会議室に響き渡る。

頭の中では嫌でもあの夜のことが思い出されて、本日何度目かわからないため息を吐き出していた。




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