イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「父さんもう今年で定年なんだぞ。身体にいつ何があっても不思議じゃない歳なんだから、早く安心したいんだよ」

「健康診断はA判定だったけどね」


お父さんの隣の椅子に腰を下ろすお母さんが、ニコニコしながら補足した。

彼女はお父さんとは逆で、のほほんとしているように見えて、意外としっかりしている。十歳以上離れた年の差婚をした二人だけど、相変わらず仲が良さそう。

とりあえずお父さんの言葉は受け流しておこうかと思っていると、今度はお母さんが爆弾を投げてくる。


「まぁ、孫は置いておくとして。あてはあるのかしら? お婿さんになってくれそうな人」


“お婿さん”……もう聞き飽きました、その単語。

お母さんはただ、私に彼氏がいるかどうかを聞きたいだけかもしれないけど、やっぱり辟易してしまう。


小さい頃から、姉妹の私達は『将来どっちかはお婿さんをもらってね』と言われて育った。

お父さんは役職者だけれど、社長だとか高い位ではない。土地を少し所有していて、貧乏ではないけどそこまで裕福でもないし、私達もお嬢様というわけではない。

ただ、この土地の昔ながらの風習というかで、“女だけの家庭は婿をもらう”というのが当たり前になっているのだ。

無論、今目の前にいるお父さんもお婿さん。

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