イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
弥生ちゃんはいいコだから、部長がいなかったら、私を置いてひとりで帰ることなんてできなかっただろう。やっぱり、この出逢いには感謝すべきか。

顔を上げた私は、さっき弥生ちゃんに取られたグラスを再び手に取った。だいぶ氷で薄まったカクテルを眺めながら呟く。


「まさか、部長もここにいたとは……」

「接待終わりでひとりで飲んでたんだ」


そう言われてみれば、スーツ姿だけどネクタイは緩められているし、仕事終わりなのだとわかる。

彼のこんな姿は初めて見るし、仕事以外の話をするのも初めてだ。と言っても、仕事でもたいした関わりはなかったから、部長は未知の存在の人。

ただ彼を見付けた時は、外見だけでなく、きびきびと働く姿がものすごく格好良い人だな、と思って見ていた。

そんな部長様と今の状況になっているのは、私にとってはある種ファンタジーみたいなことだ。現実味がまるでない。

酔っているせいもあって、夢の中にいるような感覚で薄まったカクテルを口に含むと。


「坂本は失恋でもしたのか」


突然部長がそんなことを言うから、私はごくりと喉を鳴らして目を丸くした。


「へっ!? なぜ失恋……」

「さっきから婚活がどうのとか、男が欲しそうな発言してたから」


うわぁ、やっぱり聞かれていたんだ……最悪。

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