イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
やってしまった、と頭を抱えるけれど、それなら今さら取り繕わなくてもいいかと思い直す。というか、すでにこんな酔っ払いの姿をさらしているんだから、隠すものなんてない。


「失恋じゃないですよ。でも、男っていうか……愛は欲しいです。結婚に至るくらいの愛が」

「重いな」


バッサリと切られて、息の根が止まりそうになる。


「軽い女よりいいけど、あんまり求めすぎると男は逃げてくぞ」


涼しげな顔で、琥珀色の液体を口に運びながら忠告する部長様が、ちょっぴり憎らしく見えてくる。

それはきっと、彼が言うことが正しいから。


「そんなの……わかってますよ」


グラスを両手でぐっと握りしめて、泣きそうな声を出す私を、部長が横目で見る。

自分が重い女なのだと改めて自覚したら、急激に虚しさが襲ってくる。自分とは反対に、これまでの恋愛はちっとも重さがなくて、全部が虚しい。


そうして、気が付いたら私は過去の恋愛話を語り始めていた。お婿さんの話を出して逃げていった人や、逆に財産があると思って急に馴れ馴れしくしてきた人のことを。

部長にとったら絶対つまらない話。迷惑だろうと思ったけど、口をついて出たら止まらなくなってしまった。

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