イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
案の定、彼は何も言わずにグラスを傾けるだけだったけれど。たとえ聞き流されていても、ただ愚痴を吐き出させてくれるだけで、気分が軽くなっていく気がした。


「私、ほんと要領悪くて……。恋愛の仕方なんて誰も教えてくれないのに、どうして皆うまく付き合えるんだろう……」


相手がそんなに親しいわけではない部長だということもすっかり忘れて、私は友達に話すような感覚でそう言っていた。

コツン、とカウンターにおでこをくっつける。今日の髪は緩くまとめたローポニーテールにしているから、かろうじてオバケみたいにはならずに済んでいるだろう。

すると、部長からこんな言葉が返ってきた。


「んなもん、失敗して覚えていくしかねぇだろ。最初からうまくいく奴なんていない」


返事を返してくれたことと、恋愛の酸いも甘いもわかっているような言い方に反応して、私は顔だけ横に向けて彼を見上げる。


「……部長も、失敗したことあるんですか?」

「成功してたら今頃ひとりで飲んでたりしねーよ」


ふっと気を許したように笑う彼を見て、ギスギスした心が少し丸くなった気がした。

部長くらいイイ男なら、恋愛で失敗したことなんてないんじゃないかと思った。意外とそうでもないんだ……ちょっと親近感が湧くかも。

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