イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
ほぼ冗談なんだけど、本気で考えてくれたらいいな……という期待が、正直、ほんの五パーセントくらいあったりした。けれど。


「そんなことだけで一生涯の相手を決めるなアホ! これだから恋愛偏差値の低い酔っ払いは……もっと笑える冗談を言えってんだ」


彼はとっても険しい表情で辛辣な言葉をぶつけてきて、私は思わず肩をすくめた。

部長って、こんなに口が悪いお方だったんですか……。会社ではほんの一面しか見えていなかったことに気付き、少し衝撃を受ける。

ひとつ息を吐いた部長は、気だるげに片手で頬杖をつき、抑揚を抑えた真面目な口調で話し出す。


「結婚を甘く見んな。相手の嫌な部分も全部知って、それを受け入れるなり我慢するなりしなきゃ、他人と家族になんかなれねぇよ。接待みてーに、その時だけ相手のご機嫌取ってりゃいいわけじゃねぇんだ」


ついさっきの無茶苦茶な気持ちはどこへやら、私は真剣に耳を傾けていた。彼の言うことはもっともで、何の反論も出やしない。

膝の上に両手を揃え、黙って聞く私の方を、ふいに部長が振り向いた。

漆黒の瞳に捕らえられ、さらにこちらに向かって手が伸ばされるものだから、否応なくドキリとする。


「お前、俺の全部を知りたいのか?」


どことなく妖艶さを帯びた声がすると同時に、彼の長い指が私の頬に触れた。

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