イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
ふむふむと聞いていた彼女は、たった今運ばれてきた美味しそうなオムライスに、さっそくスプーンを差し込む。


「じゃあ仕事してる間は、本当に結婚してますって体(てい)でいくつもりなんだ」

「そうなるね……。こんなことうまくいくわけないのに」


ため息混じりに言い、私もデミグラスソースが掛かったとろとろの卵をすくった。


「すごいことになっちゃったね~。坂本部長もクレイジーなことするなぁ」

「……顔、ニヤけてるよ」


私はもぐもぐと口を動かしながら、向かいの彼女を据わった目で見る。

ちょっとは私の気持ちを汲み取ってくれるかと思いきや、ふみかは明らかに中谷さんと同じような顔で笑っている。


「だって楽しそうなんだもん! 超絶イケメンが旦那様になることなんて、現実じゃ滅多にないじゃん。それを体験できるんだよ? うらやましーい!」

「そう言われると魅力的な気はするけどさ……」


ふみかが目を輝かせるのも、わからなくはない。私自身、さっき部長と話していて似たようなことを思ったのだし。

だけど、冷静に考えて。こんなシミュレーションは、ゲームとかマンガとか、二次元の世界だからこそいいのであって、実際は気苦労が増えるだけだよ絶対……。

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