イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
……ちょっと待った。ということは……。


「私、本当の彼氏が作れないってこと!?」


カチャンとお皿にスプーンを落とし、顔を歪める私。

社内はもちろん、社外でだって他の男性といるところを目撃されたとしたら、不倫していると噂になってしまうのでは!? こんな私にすぐ彼氏ができるはずもないけど、万が一!

危機を感じて焦る私とは正反対に落ち着いているふみかは、意味深な笑みを浮かべる。


「大丈夫、打開策はあるよ」

「何?」

「一葉と部長が、本当に付き合っちゃえばいいんだって」


…………そうきたか。

得意げな顔をするふみかだけど、それがたぶん一番難しいからね?

じとっと見つめる私なんて気にせず、妄想に拍車をかける彼女は、うっとりと視線を宙にさ迷わせる。


「偽装の結婚生活、からの本当の愛が芽生えて結婚……なんて、まさにドラマだよね! 部長がムコ殿か……素敵~」


私の頬が膨らんでいるのは、オムライスを頬張ったせいか、語尾にハートマークを付けて言いたい放題のふみかのせいか。


「また簡単に言う……。そんなに都合良く愛が生まれて結婚できるわけないじゃん!」

「苗字が一緒ってだけで求婚しといてよく言うねぇ」


文句を言ったものの、意地悪っぽく唇の右端を上げる彼女に、私は簡単に負けてしまった。

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