イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「もうあの失態は思い出させないでよー……」


恥ずかしさと後悔から、両手で顔を覆う。

部長に逆プロポーズをして、たしか彼のウイスキーを奪って飲んじゃったのよね……。今思えば、本当に酔っ払いは怖いもの知らずだ。

忘れたいところだけ記憶に残っているから困っちゃう。

眠りに落ちる直前、私は何か言ったような気がするのだけど思い出せないし、そこから先の記憶もない。気が付いたら朝で、ちゃんと自分の部屋のベッドで寝ていた。

どれだけ迷惑をかけたか、考えるのも恐ろしくて身震いする私だけど、ふみかはオムライスを食べつつこんなことを言う。


「一葉にとっては失態かもしれないけど、部長はまんざらでもなかったんじゃないかな。本当に迷惑だったら、偽装夫婦なんて面倒なこと絶対しないし」

「そうかなぁ……」


もし自分が部長の立場だったら、と想像して顔をしかめる。

あの二日後の月曜日、出社して真っ先に部長のもとへ向かった私は、当然土下座するくらいの勢いで謝った。

彼が言うには、私はかろうじて住所を言えたらしく、一緒にタクシーに乗って部屋まで送ってくれたそうで。やっぱり迷惑をかけまくってしまったことを、本当に申し訳なく思ったのだった。

これで彼が何も気にしていないなら、もうブラック上司だなんて言えないよ。

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