イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?
納得していると、中谷さんはトントンと資料をデスクに軽く落としてまとめながら、呆れたように言う。


「だからって、タヌキ部長は文句言い過ぎだと思うけど」

「ですよね!?　契約取るのだって大変で、皆一生懸命やってるのに、あんな言い方ないですよ！」

「タヌキ親父はほっとけ」


中谷さんではない声が投げ掛けられ、つい声が大きくなっていたことに気付いてはっとする。私の言葉が聞こえたらしい部長がたしなめたのだ。

ぱっと中谷さんの斜め後ろに目を向けると、彼はパソコンの画面を見たまま、涼しげな顔でこんなことを言う。


「配送は明日。まだやってもいないのに無理だなんて言うヤツは甘いんだよ。げんこつ山に帰っていただいて結構」


厳しいことを言ってるのに吹き出しそうになる。中谷さんも部長も、田沼部長をタヌキ化していることにじわじわと笑いが……。

なんとか堪える私に対し、中谷さんは無理せず笑っている。


「キツいわ～部長。一葉ちゃん、よく結婚したわね」

「えっ!?」


うわ、不意打ち！　準備不足でギョッとしてしまう。


「あ、でもふたりきりの時は優しくしてくれてるのかしら？　それもギャップがあっていいか」


うふふっと微笑む彼女に、顔を引きつらせたまま固まる私。

そんなやり取りを、片手で頬杖をついた偽の旦那様が一瞥し、クスッと笑みをこぼしていた。


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