イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
その日は少し残業して、オフィスを出たのは午後六時半を過ぎていた。もう外は太陽の名残もわずかで、日が暮れるのが早くなったなと感じる。
そのまま普通に帰ろうとしたのだけれど、まだ電気がついている配送センターが気になった。
昼間の一件を思い出し、明日の配送は大丈夫だろうかと、少し心配になる。
ゆっくり歩きながらなんとなくそちらを見ていると、トラックの陰から思いがけない人の姿がちらりと見えて、私は思わず足を止めた。
すらりと背が高く、さらりと流れる黒髪の、ワイシャツを腕まくりしている男性。あれは……。
「……坂本部長?」
おそらくそうだろう。作業着を着ている配送部の人達の中に、ひとりだけ違う格好をしているから目立つ。
どうして彼がそんなところにいるのか気になって、私は帰ろうとしていた足を、配送センターへと方向転換させていた。
トラックの横を通り抜けて奥へ進むと、たくさんの段ボール箱が積み重ねられた広い倉庫になっている。今は就業時間外だから、配送部の人も数人しか見当たらない。部長はどこだろう。
あまり来ることはないその場所に入り、周りをキョロキョロと見回していると。
「何やってんだ?」
背後からお目当ての人物の声がして、ピンと背筋を伸ばした。