イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「私にできること、何でもやります」


力仕事は頼りにならないかもしれないけど、何かしら手伝えることがあるはず。

やる気だけは十分の私に対し、部長は少し困ったように眉根を寄せる。


「もう退勤してんだろ? タダ働きになるぞ」

「構いません」


サービス残業上等ですよ、と思いながらきっぱり即答した。役職者だから、残業手当がつかない部長だって同じだ。

少し思案した彼は、再びこちらに向かってきながら言う。


「お前、この倉庫のどこに何があるかわからないだろ。足手まといになるだけだ」

「っ、でも──」


その通りだけど、ここで引きたくはなくて、反論しようとした瞬間。トラックの荷台に置いてあった何かを手に取った部長は、それを私の目の前に掲げてきた。

……これは、発注表?

バインダーにくっついたそれは、たくさんの食材の品目と数量がずらりと並んでいる、購買部にいた時には毎日のように見ていた帳票だ。


「ここにある乾物と、これから分ける冷蔵品、数と種類ちゃんと合ってるか確認しとけ」


目を丸くする私にバインダーを手渡して、部長はぶっきらぼうに言った。

いつぶりだろう、仕事を任されることがこんなに嬉しいと感じるのは。

私はバインダーを胸に抱きしめ、「はい!」と笑顔で返事をした。


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