イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「珍しいね、坂本さんがこんな時間まで残ってるなんて。ふたりで帰宅ですか?」


はっ!と、私は目を見開いた。

この状況を見ればそう思うのが普通だろうけど、私達が夫婦として過ごしているのは社内だけ。外へ出てしまえばただの男女だ。

ここはどうかわすのが最適なんでしょうか、エセ旦那様!?


「あーえっと……」


言葉がまごついて、挙動不審になってしまう。

しかし、この突然の出来事に対処できないのは私だけだったらしい。


「あぁ。同じ時間に帰れることなんて滅多にないから、こういう時くらいはな」


隣の彼は、まったく動揺せずにこう答えていた。とりあえずここでも偽夫婦を演じておくことにしたらしい。

落ち着いて考えればそうか。一緒に帰ることにしておいても、早乙女くんが私達より先に帰ってくれれば問題ないもんね。

ほっと胸を撫で下ろしていると、早乙女くんは羨ましげな表情で笑う。


「仲良しですね。部長も家では奥さんを溺愛してるって噂、やっぱり本当だったんだ」


えっ。噂はそんなところまで進展しているの?

なんだか微妙な気分になりつつ、ぎこちない笑みを浮かべていると、部長はちらりと私を見下ろす。


「へぇ……。誰がそんなこと言ってんだろうな?」

「!? わ、私じゃないですよ!」

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