イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「何作ってくれんの?」

「できるまで内緒です。でも、たいしたものじゃないですからね」


あまり期待させないようにそう答えたけれど、部長は「楽しみにしてる」と言って微笑を浮かべた。

そこで、忘れていた緊張が急に戻ってくる。だって、部長が会社では絶対見せない柔らかい笑みを見せるから……。

でもダメだよ、これから家にふたりきりだとか意識しちゃ!

恋愛偏差値はまだまだ低い私には余裕なんてなく、とにかく料理のことで頭の中をいっぱいにして、買い物を済ませた。


車に戻り、程なくして着いたのは、十二階建てのマンション。グレーのシックな外観で、ホテルのロビーのようなエントランスもとても綺麗。

遠慮がちに部長の後に続き、キョロキョロしながら、八階だという彼の部屋へ向かった。

エレベーターに乗り込み、上がる階数の表示を見上げて呟く。


「こんなに素敵なところに住んでるんですね……」

「部屋はたいして綺麗でもないぞ。お掃除ロボがいるけど」

「え! いいなぁ」


羨ましく思って声を上げるけれど、部長は少しだけ仏頂面をしている。


「でもアイツのフィルター掃除するのが面倒であんまり使ってない」

「意味ないじゃないですか」


すぐさまつっこむと、小さく笑いをこぼす彼につられて、私も笑った。

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