イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
すみませんでしたね、お風呂上がりの一杯を飲ませてあげられなくて!

今せっかくちょっと幸せな気分になっていたのに、一気に萎んでしまった。


「すみませんね、私のせいで」


引きつった笑いを浮かべ、棒読みで卑屈を言うと、部長はミネラルウォーターのペットボトルを取り出して言う。


「このまま泊まってけば?」


………………はっ!?

衝撃の一言で、フライパンの上で傾けていた油をドバっと入れてしまいそうになった。


「とっ、とととま──!?」

「冗談だよ」


クッといたずらに笑い、リビングの方へと歩いていく彼。私はぱかっと口を開けたまま。

……また踊らされて私は! 今日何回目よ!

悔しいのと恥ずかしいのとでまた顔を熱くしながら、このやり場のない思いも燃やしてしまえと言わんばかりに、ジュウジュウとお肉を焼いていった。



二人分のお皿に盛りつけた生姜焼きは、しっかり調味料も絡んで美味しくできたはず。

でも、部長の好みの味付けはまったく知らない。お口に合うかどうか、ダイニングテーブルの向かい側に座って一口目を食べる彼を、ドキドキしながら見ていた。


「……ん」


もぐもぐしていた口の動きが止まり、無表情で一時停止する部長に、一瞬まずかったかな?とドキリとさせられる。けれど。


「うま!」


すぐに驚いたような顔で素直に感想を言ってくれて、私の表情も一気にほころぶ。

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