イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「……なんか、結婚に夢見れねぇんだよな。いつかは終わりになる時が来るんじゃないかって疑っちまう」


それはどことなく覇気のない声で、私の胸はほんの少しざわめく。

部長は、そんなふうに思ってしまうような経験をしたということ?

ふと、バーで話した時のことを思い出す。あの時、彼は恋愛で失敗したことがあるようなことを匂わせていた。

もしかして、結構大きな失恋をしたのだろうか。


「“好きって気持ちがあれば一生一緒にいられる”なんて、甘いこと思う時期はとっくに過ぎたよ」


部長はシンクに食器を置きながら、フッと鼻で笑った。

彼くらいの歳なら、いろいろな経験をしていて当たり前だし、たしかに好きだという気持ちだけでうまくやっていけるほど、結婚は簡単なものではないだろう。

だから、彼がそう言うのもわかるのだけど……。


「……そんな、寂しいこと言わないでくださいよ」


眉を下げつつ、ぽつりとこぼした。夢見がちな私からしてみれば、やっぱり結婚は永遠の愛を具現化する最大の儀式だと思うから。

ぱっと部長の方を振り向くと、真面目な顔で訴える。


「甘いかもしれないけど、その気持ちが大事なんじゃないですか。“ずっと一緒にいたい”と思って、永遠を誓い合うことができるのは奇跡みたいなことですよ。部長にも、その幸せを感じてほしいです」

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