貴方が好きです。


ーその帰り道。




「龍さ、何かあった?」

「?」

「ほら…百合先輩とさ…」





めずらしく少し躊躇いながら望月は俺に言った。

望月に何も話していない俺はびっくりしたが、

そう言えば望月には夏休み前にも

七瀬先輩の事聞かれたよな…。







「…別に?何で?」

「ん…?いんや、何も無いんだったらいいんだわ!」







何かを考えた後、先程とはうって変わり、いつも通りのへらへらした笑い方をしながら言った。

もしかしたらあの日、すぐ後に望月も水道に来ていたのかもしれない。

そう思うと納得いったが何も言ってこない事には

望月が何を考えているのかいまいち分からない。

そして別れ際、望月は俺の肩に手を置いて





「ま、話したくなったら話してくれたまえよ!」





じゃな!と俺の肩に置いていた手を振りながら帰って行った。

望月の小さくなっていく後ろ姿を眺めながら、

七瀬先輩の話題が出たからだろうか、

少し、彼女に会いたくなった。





-----先輩が引退して一ヶ月後、9月に思った情けない話。



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