記念日に愛の言葉を

「分かっています。今日中には必ず終わらせるので」

「しっかりやってくれよ。今日は娘に早く帰ると約束してるんだから」

部長の家の事情なんて知らないよ。口に出して早く帰るとか言わないで欲しい。
こっちだって今日は早く帰りたいから必死に頑張ってるのに……。
こうして部長と話している時間がもったいない。

「それでしたら、部長は先に帰っていただいても構いませんよ。明日の朝一に最終確認をしていただければ大丈夫だと思うので」

「そうか。じゃあ、そうしてくれ」

私の言葉にあからさまに嬉しそうにする。
今日はクリスマスイブということもあり、部長の浮かれ具合は半端ない。くそ狸には責任感ってものがないのか、と脳内で悪態をついた。

私が残業することになった原因の後輩、藤井奈々は時計を気にしながらパソコンの電源を落としている。
藤井は今年入社した今どきの子。
小柄で自分を可愛く見せることを分かっている。甘え上手で男受けしそうな感じがして、外見は常に気を使っているように見えた。
ん?藤井のメイクがさっきまでと違ってる。
もしかしてメイク直しをしてきたんじゃ……。仕事が終わるまで我慢できないのかと言いたくなる。
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