記念日に愛の言葉を

「藤井さんのミスのせいで、私ら同期まで仕事が出来ないって思われてそうで嫌なんです」

頬を膨らませながら言う。その馬場さんも入社当初は多少、学生感覚が抜けなかったところはあるけど最近はそれなりに仕事は出来てると思う。

定時のチャイムが鳴り、藤井は嬉しそうに誰よりも早く席を立つ。
馬場さんも今日は予定があるらしく「すみませんが、お先に失礼します」とすまなそうに私に言って企画部のフロアを後にした。そうか、馬場さんもリア充だったよね。

よし、やるぞと気合いを入れパソコンに向き合うこと約一時間。ようやく終わり、時計を見ると十九時を回ったところだった。
データをプリントアウトし出来上がった資料をファイルに入れ、机の中にしまってパソコンの電源を落とす。

フロアを見回すと私一人で、あの狸部長の姿もなかった。
いつも残業している男性陣も今日はいない。みんな帰るの早過ぎでしょ。
ふと、ある席に鞄が置かれているのに気付く。そこは林チーフの席だ。まだ帰ってなかったことに安堵し、机の上を片付けていると静かなフロアに足音が響く。

「終わったのか？」

その声に振り返ると、鞄の持ち主の林チーフがいた。