記念日に愛の言葉を
「あぁ、大丈夫だ。お互いに残業することもあると思ったから最初から二十時に予約していたんだ。俺は早く終わらせたけどお前は案の定、残業になっただろ」
意地悪に笑いながら言われ、私は居たたまれない気持ちになる。
「早く終わればどこかで時間をつぶせばいいし、終わりそうにないなら俺が手伝おうと思っていたんだ。ちょうどいい時間に終わってくれてよかったよ」
それを聞いて安心した。
シャンパンで乾杯し、前菜から始まり談笑しながら豪華な料理に舌鼓をうつ。
そして最後のデザートが運ばれてきた時、私は言葉を失った。
「えっ」
目の前には“Happy Birthday”というメッセージが添えられたケーキが置かれている。
そう、私の誕生日はクリスマスイブなんだ。
呆然としながらチーフを見ると、穏やかに微笑みながら口を開いた。
「誕生日おめでとう、真琴」
「あ……、ありがとうございます。チーフ」
こんな風に誕生日を祝ってもらえるとは思わず、嬉しさを噛みしめながら言うとチーフは眉間にシワを寄せる。
「プライベートでチーフはないだろ」
不貞腐れたように言う。
確かにこんな素敵な場所で仕事モードで呼ぶのはダメだよね。
「ありがとうございます。政孝さん」
言い直すと政孝さんは満足そうに笑い、ポケットから四角い箱を出した。