記念日に愛の言葉を

「正直、こういうのに疎くて全部雑誌とかの受け売りでベタだとは思うけど……」

そう言って深呼吸し、真っ直ぐに私を見つめて箱を開けた。

「真琴、俺と結婚して欲しい」

その箱の中には、眩く光るダイヤモンドの指輪が入っていた。
ドラマでよく見るような憧れのシチュエーション。
それが自分の身に起こっていることが信じられず、バカみたいにポカンと口を開け固まってしまった。

「あまり気の利いたことは言えないけど、これからも真琴とずっと一緒にいたいんだ」

政孝さんの言葉にじわりと視界がにじむ。返事をしたいのに嬉しさから何も言えない私に、政孝さんの瞳が不安そうに揺れた。
普段、仕事中ではそんな顔は一切見せないしプライベートだって見たことがない。
私は頬を濡らす涙を拭い、笑顔を見せる。

「はい……。よろしくお願いします」

政孝さんは安堵の息をはき、私の左手薬指に指輪を嵌めてくれた。
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