The key to heart
♪♪♪♪♪〜
目覚まし時計の音で目を覚まし、
「んー…」
乱暴に音を止める。
しばらく寝ぼけたままボーッとし、のそのそと体を起こす。
ベッドから出て、カーテンを開け伸びをする。
いつもはセーラー服を手に取るけど、今日は違う。
私は、その隣のブレザーに手を伸ばした。
シャツを着てブレザーを羽織り、スカートと靴下を履く。
胸の辺りまである髪を簡単に整え、必要なものを入れたバッグを持って部屋を出た。
階段を下り、リビングに入ると、いつもの光景が私を迎えた。
朝食の良い匂い、それを作る叔母の幸恵さん、椅子に座って新聞を読む叔父の浩二さん。
「紗月ちゃん、起きた?おはよう」
こう言って笑う幸恵さんも、いつもと同じ。
「おはよう」
返しながら、浩二さんの向かい側に座る。
浩二さんは私を新聞越しにチラッと見るだけで、なにも言わない。
これも、いつものこと。
「はい、どうぞ」
朝食を並べてくれた幸恵さんは、私の隣に座る。
いただきますと手を合わせて、トーストを1口かじった。


小学校6年生の時、私は両親を失った。
事故だった。
その時2人は一緒に出かけていて、交差点で信号を無視した車と追突したらしい。
即死だったって知ったのは、学校から病院に行き、両親の冷たくなった姿を見た時だった。
だけどなぜか私は、泣かなかった。
両親が病院の人によってきれいにされていくのを見ても、車で葬儀屋さんまで運ばれていくのを見ても、葬式の時も、火葬の時も。
自分でもそれがなぜなのかはわからない。
信じられないとか、理解できなかったとか、そういうことじゃない。
私は確かに、2人に怒りを覚えていた。
なんで私を置いて死んでしまったのかって。
死ぬなら、私も連れていってよって。
あまりにも泣かない私を大人達は逆に不憫に思ったらしい。
きっとまだなにもわかっていないんだと同情する大人もいた。
その1人が、幸恵さんだった。
親戚の集まりで、身寄りのない私をどの家で育てるか相談が行われた。
そこで1番に名乗り出たのが、幸恵さん。
私のことを可哀想にも思っていたし、幸恵さんと浩二さんの家には子供がいなかったから、ちょうど良かったみたい。
いくら親戚とはいえ、あまり付き合いはなかったし、そんな子供を育てる余裕なんてどの家にもないから、みんななにも言わずに幸恵さんと浩二さんに私を預けることに決めた。

私の意見なんて聞かずに。









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