The key to heart
両親が死んでから心の支えになってくれたのが、1歳下の乃村杏だった。
杏とは年齢が違っていたけど、幼稚園の頃からずっと仲が良かった。
どちらかが辛い時は、一緒になって悩んで、一緒に笑って、一緒に泣いて。
私は杏のことが大好きだったし、杏も私に懐いてくれていた。
良い関係が続いていたのに、終わりは突然だった。
両親の墓参りを終え、帰り道、私は杏の家に行った。
杏が、大事な話があるって言うから。
「杏、どうしたの?」
杏の部屋に入り、気になった私は早速聞いてみた。
だけど杏は、
「……」
私に背を向け、なにも答えない。
「杏?」
「……」
「ねえ、杏ってば」
心配になり、杏の肩に手を置くと、「触らないで!」と振り払われた。
「えっ…」
突然のことに、私の頭はついていかなかった。
杏が声を荒らげたところを、初めて見たから。
「前から言おうと思ってたんだけどさ」
杏は、やっと私の方に振り返った。
「私、紗月ちゃんのことずっと嫌いだったんだよね」
驚きのあまり、私はなにも言えなかった。
「嘘…だよね?」
びっくりしすぎて、なぜか私は笑ってしまいながら聞いた。
杏のことだから、きっとすぐに、
「うっそぴょーん!騙された?」
なんて、笑顔で言ってくるはず。
だけどそんな期待も、見事に裏切られた。
「嘘だと思ってんの?なわけないじゃん」
杏も、笑っていた。
でもそれは、嘲笑だった。
私を、ばかにしているような。見下しているような。
そんな感じの笑い方。
…ううん、笑っているというよりも、口角の端を吊り上げてるだけ。
こんな杏の表情、見たことない。
杏が言っていることが事実なんだとわかった私は、もうなにも言えなくなってしまった。
杏はそんな私を鼻で笑い、「出てって」と言って私を家から追い出した。
その後からだ。
私が、友達というものと関わるのをやめてしまったのは。
友達なんていう関係は、「嫌い」っていう一言だけで、簡単に終わってしまうことを知ったから。
だから私は、今まで仲の良かった友達も突き放し、誰とも関わらないようにした。
また、杏の時みたいに傷つくのが嫌で。
勝手に自分の中で、いつかは裏切られるんだって考えて。
その後すぐに小学校を卒業して中学校に上がったから、杏がどうしているのか知らない。
で、直後に自治体からの紙を見つけてしまったから、私は余計人が信じられなくなってしまったんだ。





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