翼をもう一度。


「話してごらん?
全てを」



香織さんが
あまりにも優しいから



私の目には涙がたまっていた。


泣くのは何時ぶりだろう。




「ママがいなくなってから、
私は親戚の家を転々としてました。
どこに行っても言われます。
『あの子は鈴花を殺した娘だ。』って。
ついに捨てられたんです。
もうお前の貰い手はいないって。
ママの通帳にはお金はほとんど
入っていませんでした……。
そこから私は路地裏で暮らしました。」



「ごめんね!!
会いに行けなくてっ……
行った時にはもう遅くて
鈴花も鈴美ちゃんも
いなくなってたの……。」



肩を揺らしながら泣く香織さん。



そっと抱きしめる
男の人はきっと
香織さんの旦那さんだろう。


「でも大丈夫です。
私はあの生活に慣れました。
痛みもひきましたしもう戻りますね。」



軽く笑って立とうとする。


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