メルヘン・メンヘラ
乾燥した目覚まし時計の音で目を覚ます。
冬の朝。
ベッドの中でゆっくりとしていたいけど、そうもいかない。
名残惜しいがベットから這い出る。

キッチンに行き、電気をつける。
誰も起きていない。
 
バチバチと窓ガラスに響く雨の音。
今日は、自転車で登校できないくらいの大雨。
雨の日って、なんで気分が憂鬱になるんだろう?

今日のお弁当は何にしようかな。
適当に卵でも焼こうか。
キャベツともやしを入れて、野菜も取ろう。
味付けは塩コショウにして。

野菜炒めでも作るか。
肉は解凍してあった豚肉があったはず。
そんなに時間はかからないかな。

そうこうして作る私のお弁当。
私のお弁当。

もう、こんな時間か。
朝ごはんも作らなきゃ。

トーストとお弁当のおかずのあまりもの。
あまり贅沢は言ってられない。

私が食べ終わり、食器の片付けも終わったころに母親が起きる。

一言も会話を交わさない。

お互いがお互いを視認しつつ、暗黙の了解で無視を決め込む。
一切関わらない。

洗面台に行き、歯を磨いて顔を洗う。
その時に、左腕も確認する。

傷は昨日と変わらず鎮座している。
私の腕に堂々と。
別に驚かないし、というか、ない方が驚くと思う。
たぶん、本気でビビる。
傷を見て、安心している自分がどこかにいる。

ちょっと安心して、身支度を続ける。
コンタクトを入れて、髪を梳かす。
ショートだから、そんなに手間がかからない。

それが終わると、着替える。 
パジャマを脱いで、制服に着替える。
 
隣の高校は制服がないらしい。
でも私は、毎日洋服を選ぶ手間を考えると、制服で構わない。
普通に可愛いし。

私の学校の制服はセーラー服で、大人っぽいとコスプレ感が出ちゃう。
でも、私の場合は大丈夫だ。
童顔だし。
背が低いし。
貧乳だし。
って、とらえ方によっては十二分にコンプレックスになりそうなことばっかりだ。
自傷の次は自虐か、って。

ゆっくりしていたいところだけど、今日は自転車で行けないから、早めに出発しなきゃ。
レインコートを着て自転車登校できるほど勇者じゃないし。
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