ゆえん
Ⅰ-Ⅸ
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朝から太陽が眩しい。
もうすぐ七月七日が来る。
いつものように起きて、身支度をして冬真は『You‐en』に向かう。
今日は穏やかな気持ちで空を見上げられる。
一言は何にしよう。
思いっきり明るい言葉にしたい。
沙世子のイメージを膨らませて。
昨夜、冬真は封印していた沙世子の日記を開いてゆっくりと読み直していた。
読みながら、沙世子の日記の文面には、冬真のことを、そして冬真への想いを否定するようなことがひとつもなかったことに気付いた。
最初に読んだときに彼女の言葉を素直に心に沁み込ませていれば、すぐに気付けていたはずなのにと、冬真は後悔した。
いつかは失うときが来る。
なんでもそうだ。
永遠なんていうものは言葉だけで、実在するものではない。
ただ永遠を願い続けることは出来る。
それは自分の中でだけのことでも、永遠であって欲しいと想い続ければ永遠になるんだ。
沙世子の永遠の想いは〈冬真を幸せにしてあげる〉だった。
そう想い続けて、そうあり続けてくれた。
時に切なくとも、楓を見つめる冬真ごと彼女は受け入れていたこと、それは沙世子が残してくれた永遠の想いだ。
〈ワレをつつむ、エイエンなるツキアカリ〉
書いた後に、冬真は小さく笑った。
誰にもわからないかもしれない。
きっと意味不明の言葉だろうけれど、今日はコレにしよう。