ゆえん
鍵を閉めた真犯人は、翌日の放課後に楓に会いに来た。
ソフトボール部の三年女子だった。
当日の放課後の練習中に、千里子が『女子更衣室閉じこめ事件』と名を打って、一部始終を部員たちに語っていたらしい。
それを聞いた真犯人は、自分がしたことで関係のない楓が担任にひどく叱られたと知って、謝りに来たのだ。
「更衣室をの前を通ったとき、千里子が私のピッチングのことを話していたのが聞こえたのよ。馬鹿にされているのが悔しくて、鍵を締めてやったの。でも、あなたがしたことになっているって千里子が得意げに話している姿を見て、なんだか余計に腹がたって。でも、一番悪いのは私よね。本当に悪かったね。ごめんなさい」
楓はただ頷いて、最後にはその三年生に頭を下げていた。
「ちゃんと謝りに来てくれたから、悪い人じゃないよ」
楓は嬉しそうに肩を竦めていた。その背後から千里子がやってきた。
「昨日は勘違いして悪かったわね」
千里子にしては素直に謝っていた。
「うん」
楓は小さく微笑んで見せていた。
「楓は、なんかこう、でかいなー」
「え?」
「ん、なんでもない」
俺が楓を好きになったのは、この時からかもしれない。