ゆえん


「そうだな。親父たちが元気だったら、どこか大手の商品部の仕事に携わってみたいかな。でも、ゆくゆくはこの店を継ぐよ」

「なんだ、結構考えているんだな」

「親父たちの背中を見て育ったからな。この店は潰したくないよ。そのためにこれからの時代のニーズとかも肌で感じてみたいと思うな」

「そのために経済学部?」

「うーん、それだけじゃないけど、家から通える中では今のところしかなかったからな。俺が遠いところに行くと親にも負担がかかるだろうからな」


今まで、洋輔がそんなことを考えていたなんて思いもしなかった。

俺は目の前のことしか考えていなかった。

ギターを弾いているときはもっともっと上達したいと思うし、楓に会えば、何かと楓の役に立ちたいと思う。


「お前、何かなりたい職業とか、やりたい仕事とかあんのか?」


洋輔が核心に触れることを訊いていた。


「やりたい仕事か」


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