ゆえん
計画していたクリスマスパーティを明後日に控えた日の夜に、楓から俺の家に電話が掛かってきた。
「浩介、ごめん。あさってのパーティ行けなくなったの」
か細い声で楓が言った。
「具合でも悪いのか?」
「私じゃなくて、瞳さんが……。今、瞳さんを一人にはしておけない。だから、落ち着くまで」
「何があったの?」
「浩介……明日うちに来れる?」
「明日か」
明日も三人で正幸の家の小屋で練習する予定だった。
「予定が入っているなら、無理しないで。バイト先の店長さんに事情は話してあるから、休みはもらってあるし。私が付いてるから大丈夫」
なんだかおかしい。
いつもの楓らしくない。
何かがあったことは電話越しにでもわかる。
「明日、七時頃でも良ければ行くよ。その時ちゃんと話してくれるよね」
「うん。わかった。ありがとう」
「じゃあ、明日」
電話で簡単に説明できることじゃないってことだろうか。
不安になることなんて、楓と出会うまでは、俺の生活には縁のないことだった。
俺は、楓の話の内容に、はてなマークをいっぱい浮かび上がらせていながらも、それが何かの前兆だということに
気付けなかった。