ゆえん
「要司の彼女も東京の大学を受けるのか?」
「いや、だって俺の彼女は既に大学生」
涼しげな表情のまま、さらっと答えた要司に、俺と正幸は顔を見合わせてしまった。
「てっきりうちの高校の人かと思ってた」
「そういや、俺たちってあまりその手のことは詳しく話したこと無いよな」
しみじみと言う要司がいつもより砕けて見えた。
だから時間が経つのも忘れて、俺は三人で話していた。
時間に注意がいった時は既に午後七時半を過ぎていた。
「ああ、ワルイ。俺、先に帰るわ」
「おう、じゃあ明日な」
「おう、明日」
正幸の家の小屋を出て、俺は自転車を必死にこいだ。
約束した時間より大幅に遅れてしまった。