ゆえん
*
タバコとライターをテーブルの上に置き、理紗はまたカップに口をつけた。
そして店内を見渡している。
小さく頷きながらカフェオレを飲み、冬真のほうを見た。
理紗を視線で追ってしまっていた冬真は彼女と目が合ってしまい、目を逸らす。
沙世子にこれほど似ている人間が今、この場所に居ることに冬真は大いに戸惑っていた。
顔だけじゃない。
体型も髪の長さもほぼ同じだ。
これもまた夢なのか。
本当に違う人間なのか。
「お、英明、ここ」
大学生の一人が、入ってきた男に手を挙げて自分の居場所を示した。
その声に反応して理紗の視線が英明に向かう。
「早いな、お前ら」
「おい、来てるよ、あれ」
言い終わらないうちに理紗が立ち上がり、英明の傍まで歩いてきた。