ゆえん
楓が犯人に対して持っていた知識は、黒い帽子を被っていて、中肉中背で三四十代の男と言うことだけだった。
瞳さんとは顔見知りだったようで、はじめは玄関先で話していたという。
大して気にも留めず、楓は自分の部屋に入っていた。
だが、会話の途中で男の段々と口調が変わってきて、楓は部屋の戸を少し開けて様子を見た時、玄関から部屋の中に逃げ込んだ瞳さんを追って男が中へ入ってきたとのことだった。
瞳さんが楓の部屋に楓を押し込み、戸を閉めたので、楓は男の強行をはっきりとは見ていないと言う。
犯人は俺がすれ違った男に間違いないだろう。
約束通りの時間に俺が行っていれば、こんなことにはならなかったかもしれないと悔やまれた。
瞳さんの意識はなかなか戻らなかった。
楓が病院で瞳さんに付き添うというので、俺は警官たちにも家に帰るように言われ、仕方なく家に帰った。