ゆえん
第三章 リトルえんじぇる
Ⅲ-Ⅰ
最近、仮面をつけることに慣れてきた。
仮面といっても、自分の顔にお面を被る、というわけではない。
私が本当の自分を見せずに、この店で木下理紗として過ごす時間に慣れてきたということだ。
音楽スタジオと、多目的ホールと、カフェコーナーを持つ『You‐en』に私が勤め出してからもう一年と数か月が経つ。
初めは同じオーナーが所有するライブハウス『Rai』との掛け持ちだったが、今では『You‐en』専属で働いている。