ゆえん
私は図書館の雰囲気が大好きだった。
沢山の人がいるのに、それぞれが個人の時間を楽しんでいる。
勉強をしている学生もいれば、新聞を広げて見ているおじいさんや雑誌を読んでいる女の人もいる。
会話をしていないのが自然であり、一人で行っても孤独を感じないで済む。
大抵の人が一人で来ているように思われ、静かで落ち着き、安心できるのだ。
学校の宿題や予習も図書館でやるようになり、ほとんど毎日通っていた。
その図書館に勤めていたのが、隣の家のお嫁さんであった菜穂だった。
菜穂のほうから声を掛けてきて、私たちは次第に仲良くなった。