ゆえん


やっと彼の実家を知ることが出来、訪ねてみた。

「東京にいることしかわからない」と彼の母親に言われた。

ただそれだけで、高校卒業後は東京に行くことに決めた。

私には修ちゃんしか頭になかった。



大都会の東京に出て、人の多さに気持ちが折れそうになった。

この東京で修ちゃんの名前と顔と年齢しか知らなくて、どうやって探すことができるだろうか。

もう修ちゃん本人を探すというより、修ちゃんに似ていて、修ちゃんのように振る舞ってくれる人を探していた日々だった。

修ちゃんに顔が似ていて、同じように読書が好きで、バンドをやっている男には自分から近付いた。

顔とスタイルにはそれなりの自信を持っていたから、臆することなく声を掛けていった。

そんな相手と修ちゃんともしていなかったことをするようになる。

もうこの時から、私の中で何かが壊れていたと思う。


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