ゆえん



その時、修ちゃんを見掛けた私は周りが見えていなかった。

ただ、修ちゃんの姿を追うように道路へ走り出していた。

瞬間、物凄い音がした。

一瞬何が起こったか分からなかった。

でも、周りを見て気付いた。

私を避けようとしたのか軽自動車が事故に遭ったのだ。



怖くなった。

ただ怖くてその場から逃げた。

家に戻っても震えが止まらなくて、ベッドに潜り込んだ。



翌日の新聞を見て、事故の重大さを知った。

二人の人間が命を落とした。

私が原因か違うのかは全く触れられてはいなかったが、背後から迫りくるような罪悪感があった。



私は鞄を取り出した。

ここにはいられない。

鞄一つを持って駅に向かった。

音根町はいられない。

再び私は東京へと向かった。


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