ゆえん


音根町は東北の静かなところだ。

素朴な人が多くて、東京で荒んだ生活をしていた私のことを『垢抜けた綺麗な人』と勘違いしてくれている男が多かった。

元々、修ちゃんとはこの町で出会ったのだから、修ちゃんの性格に似ている人はこの町でしか見つからないのだ。

そんなことに気付きもしなかったなんて、どうかしていたと思うようになった。


修ちゃんと過ごしていた時に彼の口から出てきた言葉を拾い集めるようにして辿り着いた『Rai』というライブハウスに私は通うようになった。

バンドマンたちの中で、修ちゃんに近い雰囲気を持つ人に声を掛け、付き合ってみる。

そして修ちゃんじゃないことを思い知る。

別れを告げて、また別な男に声を掛ける。

その繰り返しを続けて飽きた。


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