ゆえん


少し大人しく、家で過ごした時期もあった。

でも、一日中家に居て、母親が私に気を遣っているのを感じながら過ごしていると、心が落ち着かなかった。

気晴しに散歩をしているとギターケースを背負っている学生の後ろ姿を見掛けた。

その瞬間、私の脳は悪い習慣を蘇らせた。

修ちゃんの代わりを見つけたように思うのだ。


忘れようと封印していたつもりで、それは〈つもり〉にしか過ぎなかった。

悪い癖は治らない。


バンドを組んでいるその学生に声を掛け、私は『You‐en』に行くようになった。

この頃の私は音根町でも『悪女』のレッテルを貼られていた。

そして『You‐en』の店長である冬真さんに出逢ったのだ。



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