ゆえん


「もしかして、理紗はここの店員さん?」

「そうだよ」

「ねぇ、ここって葉山浩介のお店でしょ?」

「うん。オーナーは浩介さん」

「葉山浩介って子供居ないよね?」


久しぶりに会った同級生も、訊くのは葉山浩介の話か。

美穂子も葉山浩介ファンなのかと思った。


「お子さんはいないよ。これ以上は個人情報を聞き出そうとしないで」

「じゃあ、ドリンクバーをひとつお願い」

「あー、ここセルフサービスで、自分でカウンターに行って注文してくるシステムなんだ」


手に持っているスーパーの袋を見せて、私はカウンターへと戻っていった。

愛想のない私に美穂子が溜め息を吐いているのが背中越しに分かる。

同級生とはいえ、小学校卒業後、彼女は違う中学へ行ったし、その後の交流もない。

別に話すことなど何もないし、こちらは一応勤務時間中なのだ。



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