ゆえん


店に戻ると、冬真さんがスパゲッティを茹でていた。

マユは目を覚まして、テレビを観ている。


「子供の番組なんてこんな時間に放送してないけど、子供が出ているドラマがあったから」


鍋からざるに麺をあけながら、冬真さんは言った。

マユはテレビに映る子供に見入っていた。

もう十時を過ぎているのに、元気なものだ。


「君もまだ食べてないだろ? 一緒に食べよう」


冬真さんは白いお皿を三枚出して、パスタの上にミートソースをかけて出してくれた。

マユには小さい小皿も用意して、店で使用している子供用のフォークとスプーンを持ってきていた。

なんと気の利く男性なのだろう。

職業柄ということもあるかもしれないが、感心してしまう。


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